本研究により、自律神経作動薬の一種であるα2アドレナリン作動薬の腹腔内投与により成熟ほ乳類の視神経が再生させることが可能であることが明らかとなった。麻酔下のラットの視神経を挫滅させ、α2アドレナリン作動薬であるキシラジン、クロニジンの連目投与を行い、挫滅後2週目の視神経内では、順行性標識された挫滅視神経繊維が中枢側へ再伸展していた。α2アドレナリン受容体拮抗薬であるアチパメゾールを前投与させると、作動薬による視神経再生効果は顕著に抑制されていた。このα2アドレナリン作用薬による視神経再生効果のメカニズムを明らかにするため、視神経挫滅後の網膜内での神経栄養因子の発現をRT-PCR法を用いて検討すると、ciliarv nerve growth factor(CNTF)が上昇していることが分かった。次に、CNTF蛋白の発現を免疫組織化学により検討すると、キシラジンあるいはクロニジン投与3日後の網膜内において、ミューラー細胞にCNTFが発現上昇していることが明らかとなった。また、α2アドレナリン受容体の3つのサブタイプの網膜内における局在を免疫組織化学にて検討すると、α2b受容体がミューラー細胞に発現していることが分かった。さらに、培養ミューラー細胞の培養液中にキシラジンあるいはクロニジン溶液を添加させると、添加後6時間目にはCNTFmRNAの発現上昇がみられた。以上の結果より、α2アドレナリン作動薬による視神経再生効果は、ミューラー細胞に発現してるα2b受容体を介して、ミューラー細胞内のCNTF発現上昇が強く関与していることが示唆された。
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