研究課題
本年度は新生仔マウスにおける網膜内血管新生の細胞・分子メカニズムの解明に向け、1)網膜アストログリアによる血管新生の制御、および2)プレキシン分子による新生血管伸長方向の制御、の2点に焦点を絞り研究を進めてきた。1)については、網膜アストログリアにおいて、核内受容体分子Tlxの遺伝子発現が酸素濃度の変化によって制御され、このために血管形成の進行とともに発現が急激に低下することが明らかとなった。こうしたTlxの遺伝子発現パターンはVEGFおよびフィブロネクチンのそれと一致しており、これらの遺伝子群が協調してアストログリアの血管新生誘導能を制御していると考えられた。Tlxノックアウトマウス網膜ではアストログリアにおけるVEGF遺伝子発現はたもたれているものの、フィブロネクチン遺伝子発現が著しく低下し、さらにフィブロネクチン蛋白の細胞外への集積が全く見られなかった。このため、Tlxノックアウトマウスでは網膜血管発生は全く見られなくなった。これらの結果より、酸素濃度の低下に応じ、Tlxが血管新生の足場を形成する分子スイッチとして機能していることが考えられた(Uemura et al. J.Clin.Invest. 2006)。一方、2)プレキシン受容体分子については、網膜における内在性プレキシンリガンド、およびプレキシン・シグナルの細胞内分子メカニズムについて引き続き解析を進めている。とくに、遺伝子改変マウスやウイルスベクターを用いた網膜内分子操作(Uemura et al. Exp.Cell.Res. 2006)により、プレキシン・シグナルの機能解析をさらに進めていく予定である。また、来年度は未熟児網膜症モデルマウスを用い、Tlxあるいはプレキシン分子の遺伝子操作等によって網膜外血管新生を網膜内に誘導するべく、さらに研究を発展させていく所存である。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (4件)
Journal of Clinical Investigation 116・2
ページ: 369-377
Experimental Cell Research 312・5
ページ: 676-683
Cancer 104・10
ページ: 2104-2115
Blood 105・12
ページ: 4657-4663