緑内障は視神経乳頭陥凹と視神経萎縮を特徴とする視神経障害を来たす慢性進行性疾患であり、我が国の失明原因としては2番目に多い眼疾患である。今後、高齢化が進むことが予想される我が国においては、緑内障、特に正常眼圧緑内障の発症機序の解明、治療法の確立は急務であると考えられる。緑内障の原因遺伝子としてミオシリン(MYOC)、オプチニュリン(OPTN)、チトクロムP4501B1(CYPIB1)が発見されており、その中でOPTNは複数のタンパク質と相互作用することがすでに報告されている。これまでに申請者が所属する研究室では、正常眼圧緑内障患者で確認されているOPTN遺伝子の変異体の一つがRab8と結合できないことを明らかにしており、OPTNとRab8との相互作用が正常眼圧緑内障に深く関係していることを報告している。 そこで本研究では、網膜を構成している細胞の相互作用においてOPTNが果たす役割について検討するためにOPTN(E50K)変異体を組み込んだトランスジェニックマウスを作成し解析を進めてきた。その結果、老齢トランスジェニックマウスでは網膜神経節細胞の細胞死が誘導され、それに伴う視神経の萎縮が観察されたが、その他の網膜構成細胞には変化が見られないことを明らかにしてきた。これらの研究成果から、OPTNは網膜神経節細胞特有の生存あるいは機能の維持に何らかの重要な役割を果たしていると考えられ、網膜神経節細胞におけるOPTNの役割を明らかにすることは緑内障、とくに正常眼圧緑内障の発症機序の解明につながるものと考えられた。
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