研究概要 |
昨年度の研究結果から、PP2は神経芽腫培養細胞株に対しその増殖能を抑制し細胞-細胞間の接着能を増強させることがあきらかになった。一方で神経芽腫の分化に及ぼす影響は少ないと考えられた。これらのことからsrcは神経芽腫の増殖能を強め、転移を起こしやすくしている可能性が示唆される。本年度はさらにこれらの現象の詳細なメカニズムについて検討した。 まずSrcの抑制による細胞の移動能の検討を行うため、Scratch ound healing testを行った。その結果srcが抑制されることにより有意に細胞移動能が弱まることが分かった。この結果はsrcが神経芽腫細胞の浸潤・転移に重要な役割を果たしているという仮説を裏付けるものとなった。 一方、src下流シグナルと細胞接着能減弱のメカニズムを詳細に検討するため、細胞間接着の重要な担い手であるcatenin-cadherin系の発現におよぼすPP2の影響を、mRNAレベルと蛋白レベルで網羅的に解析した。Alpha-catenin, beta-catenin, gamma-cateninのカテニンファミリー分子と、神経組織に特異的に発現するカドヘリンであるN-cadherinについて発現解析を行った。mRNAレベルではいずれの分子の発現量も変化しなかった。しかし、ウェスタンブロットによるタンパクレベルでの解析ではbeta-cateninのタンパク量がPP2処理後、経時的・容量依存的に減少した。このことはPP2がbeta-cateninタンパクを不安定化させていることを示唆するが、この現象が神経芽腫の浸潤能の増強にどのようにかかわるかについては今後の検討を要する
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