【背景】これまで予後不良神経芽腫の多くで発現するsrcチロシンキナーゼが神経芽腫のバイオロジー決定にどのようにかかわっているかについて検討をおこなってきた。前回までの解析によりsrc特異的阻害剤PP2の添加により神経芽腫細胞は短時間のうちに凝集し、細胞間接着の増強が見られることがわかった。このことから、srcが進行神経芽腫において細胞間接着を不安定化させ、浸潤・転移能を増強している可能性が示唆された。今回、src下流において細胞間接着の担い手としてはたらくカテニン/カドヘリンの解析をおこなった。【方法】神経芽腫培養細胞IMR32をPP210uMにて処理し、処理後経時的にtotal RNAを抽出しcDNAを作成、定量的PCRをおこなった。また同様に細胞可溶成分を抽出、各分子の発現量をWestern Blotにて解析した。【結果】N-カドヘリン、α、β、γ-カテニン、のいずれもmRNA量には変化がなかった。一方、タンパク量の解析ではβ-カテニンの発現レベルの低下を認めた。【考察】srcの阻害により細胞間接着は減弱する。この過程にβ-カテニンのタンパク量の低下が関与することが示唆された。この現象がタンパクの分解によるものか、核内移行によるものかについては今後の検討を要する。
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