本研究は、ヒト胎児心筋細胞の培養法を確立し、細胞情報基盤を整備することにより、小児重症心不全に対する細胞移植治療における理想的なドナー細胞を開発することを目的としている。 現在、国立成育医療センター倫理委員会においてヒト胎児組織を用いた幹細胞研究に関して倫理審査申請中であり、ヒト胎児組織を用いた研究は行っていない。倫理審査通過後の研究を円滑に遂行するための準備として、マウス胎児心筋細胞、ヒト臍帯血細胞、ヒト胎盤細胞、ヒト子宮内膜細胞などを用いて以下の研究を行った。 1)異種動物成分を排除した培養法・維持法の標準化 ヒト間葉系細胞の分離・培養法確立をめざした研究を行った。数種類のヒト組織由来の間葉系細胞を培養し、不死化・寿命延長に成功した。また、これらの細胞が心筋細胞へ分化する能力を持つことを確認した。ヒト間葉系細胞の分離・培養に際しては、異種動物由来の原料を排除した方法をとるほうが、望ましく、これに向けたステップとして、低血清培地による間葉系細胞の増殖能、細胞周期について検討した。 2)マウス胎児心筋細胞のプロファイリング 得られた細胞に対して、網羅的発現遺伝子解析を行った。また、胎児由来の細胞をヒト間葉系細胞の分化誘導に用いるfeeder細胞として利用するためにマウス胎児心筋細胞が発現する液性因子、シグナル伝達物質等の解析を行った。網羅的遺伝子解析データは米国NIHが提供するNIA Array Analysisを用いて解析を行った。
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