ヒト胎児心筋細胞の培養法を確立し、細胞情報基盤を整備することにより、小児重症心不全に対する細胞移植治療における理想的なドナー細胞を開発することを目的として本研究を遂行した。本年度の研究成果としては、「ヒト胎盤細胞の心筋分化誘導法の確立」が挙げられる。ヒト胎盤由来間葉系細胞はマウス胎児心筋との共培養法を用いることで心筋細胞に分化誘導出来ることが明らかになり、その割合を高める研究を行った。また、分化誘導後の細胞に対して、RNA発現解析、免疫組織学的解析を行った。さらに、電気生理学的手法を用いて分化誘導後の細胞が作業型心筋様の電気的活動を示すことを解明した。心筋に分化する能力が高いことが示唆された胎盤由来間葉系が発現する液性因子、シグナル伝達物質等について網羅的遺伝解析および表面抗原発現解析を行い、心筋分化への鍵となる遺伝子の検索を試みた。網羅的遺伝子解析データは米国NIHが提供するNIA Array Analysisを用いて解析を行った。 本研究の成果は、日本循環器学会総会(神戸)および、American College of Cardiology(New Orleans)において学会発表し、7月発行のExperimental Cell Research誌上に論文発表した。また、4月には日本外科学会総会(大阪)において胸部外科領域における細胞治療戦略についての最新の知見を得、意見交換を行った。
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