表皮細胞、皮膚線維芽細胞を用いて、従来我々の研究室で行ってきた、二種類のコラーゲンスポンジを足場として用いた複合型培養皮膚に、更に脂肪由来幹細胞を播種し、in vitroで1週間培養、表皮、真皮、脂肪の三層からなる培養皮弁を作製した。1週間で表皮は重層化したが、脂肪組織は形成されていなかった。次にこの培養皮弁を重症免疫不全マウス(SCIDマウス)の背部に作製した全層皮膚欠損創に移植した。移植する際に、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を20μ9/cm^2投与した群と、投与しない群を作製した。移植後6週後に組織を採取し、肉眼的、組織学的に評価を行った。bFGF投与群では、肉眼的に表皮、真皮、脂肪の三層が形成されていたが、非投与群では表皮、真皮は形成されたものの、脂肪はほとんど形成されなかった。これは脂肪染色であるオイルレッドO染色でも確認された。移植する脂肪由来幹細胞は蛍光色素PKH26で染色しておいたが、形成された脂肪組織はPKH陽性であり、移植した脂肪由来幹細胞が、生着分化したことが確認された。また、表皮細胞についてはHLAclassI免疫染色で染色され、移植した表皮細胞の生着が確認された。ヘマトキシリンエオジン染色切片上で形成された脂肪の面積を比較すると、bFGF投与群の方が有意に面積が大きかった。現在まで、この皮弁のような培養複合組織が生着したとの報告はなく、形成外科領域で行われる皮弁移植手術の代替になる可能性もあると考えられた。
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