真皮樹状細胞のマーカーであるFactor XIIIa(FXIIIa)を用いて、ケロイド、肥厚性瘢痕、および成熟瘢痕の各組織内での真皮樹状細胞の組織内分布を検索した。各組織で線維芽細胞の増殖している部分を中心部と定義し、その周囲の真皮網状層を辺縁部と定義して、各領域に含まれる陽性細胞数を計測した。FXIIIa陽性細胞数は中心部でケロイド11.6士7.1個/5 high power fields(以下、hpf(以下、平均値±標準偏差)、肥厚性瘢痕14.7±10.6個/hpf、成熟瘢痕21.2±8.6個/hpf(以下、ケロイド:肥厚性瘢痕:成熟瘢痕)であり、辺縁部では(96.1±32.3個/hpf:44.1±23.8個/hpf:45.2±4.7個/hpf)であった。FXIIIa陽性細胞は各組織とも中心部と比較し、辺縁部に有意に増加していた。中心部では、それぞれの組織間に有意差は認められなかったが、ケロイド組織の辺縁部では肥厚性瘢痕および成熟瘢痕の辺縁部と比較し有意に増加していた。そこで、FXIIIaを用いて、ケロイド組織の辺縁部で免疫電顕を施行した。長い突起を持ち、ミトコンドリアや粗面小胞体を多数認める細胞の細胞質内および細胞突起内に、FXIIIaは限局して認められた。以上より、FXIIIa陽性細胞は真皮樹状細胞と考えられ、肥厚性瘢痕や成熟瘢痕と比較しケロイド組織の辺縁部で増加しており、ケロイド組織の成因に関与していることが示唆された。加えて、ケロイド組織の辺縁部でFXIIIa陽性細胞が増加していることから、ケロイドの周囲組織に浸潤性に増殖する性質に、真皮樹状細胞が関与する可能性が示唆された。
|