研究概要 |
前年に引き続き、脂肪由来幹細胞から骨髄を生体内で再生する技術を研究した。昨年度同様、倫理委員会の承諾を得た上でラット,マウスから脂肪組織を採取し、コラゲナーゼ処理および遠心操作にて脂肪組織由来幹細胞を含む間質細胞を分離した。細胞を通常の細胞培養に用いる10%ウシ胎仔血清含有DMEMにて継代培養し、増殖させた。細胞が3次元的に増殖する環境を与えるために必要な、支持担体に、細胞を播種して移植しているが、支持担体には昨年度用いたハイドロキシアパタイト以外に、コラーゲンやキチンキトサン、その他の素材を用い、比較検討した。その結果、ハイドロキシアパタイトが最も優れていたため、今年度はさらにハイドロキシアパタイトの気孔率や大きさを変えて各種の骨髄生成能に関して検討した。結果は、気孔率が高く、大きさが小さいものが効率的に骨髄を再生可能であることが示唆された。 また同時に、再生した骨髄を別の個体や別の部位に移植する研究を行った。同種同系マウスでは再生骨髄を皮下から皮下へ遊離移植し、3週間後に組織学的に評価した。その結果、ある程度の大きさのものは、移植しても骨髄の形態は保たれていたものの、一定以上の大きさのものでは融解が認められ、血管茎を有した骨髄の移植が必要であることが示唆された。またラットでは、右の鼠径部周囲に作成した再生骨髄を大腿動脈を茎とした遊離皮弁として採取し、顕微鏡下で皮弁の血管茎を左の大腿の動静脈を吻合した。3週間後に、右鼠径部から左鼠径部に移植した骨髄を、組織学的に評価した。この研究では移植された組織の形態は保たれており、血管茎ごと移植することにより、骨髄移植できる可能性が示唆された。
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