研究課題
シクリッドは超近縁種間で異なる様々な顎部形態を有しており、顎部の骨格や歯の形態がシクリッドの「種」を分ける一つの指標にもなっている。顎歯の形態で顕著に見られるのが歯冠の形態の違いである。円錐形のとがった形態から、二又、三又に分かれた形態とさまざまである。今回私は、この近縁種間で顎歯形態の大きく異なるシクリッドを用い魚類顎歯の形成と多様化のメカニズムを探ることを目的に研究を進めた。マウスにおいて顎歯形成異常のミュータントとして、tabby, downless, crinkledなどのミュータントが知られている。いずれもTNFファミリーの遺伝子である、eda, edar, edaraddが原因遺伝子と報告されており、これらのミュータントマウスでは臼歯の数とともに、歯冠の形態に異常が見られる。そこで、これらの遺伝子が魚類の顎歯形態形成に関与している可能性を探るため、歯冠の形態の異なるシクリッド種間でこれらの遺伝子の比較をおこなった。比較には、円錐形の顎歯を持つ種から2種、P.chiloteseとH.tanaosを、二股に分かれている種から、P. sp."rockkribensis"とH. sp."matunbihunter"を用いた。当研究室で所有しているシクリッド顎部のESTよりcDNA全長配列を取得することができ、スムーズに配列比較に移行することができた。結果、ORF内には種間で変異は見られなかった。edarについては、5'UTRにおいて種間で異なる部位が見出された。円錐形の歯を持つ2種間では変異はなかったが、二又に別れている種でそれぞれ1箇所変異のある部位が見出された。現在、これらの置換が顎歯の形態に関わっているのかを検証するとともに、これらの遺伝子の発現についてin situ hybridization法やリアルタイム定量PCRを用いて詳細に解析する計画である。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (1件)
Molecular Biology and Evolution 22
ページ: 1649-1660