研究概要 |
Streptococcus mutansが産生する溶菌酵素Amlはう蝕原性細菌であるミュータンス菌群に対して強い溶菌作用を持つ事から、新しいう蝕予防剤になる可能性を持っている。そこで、このAml酵素の基質特異性について詳細な検討を行う事を目的として、以下の検討を行った。 1)Aml組換えタンパクの作製:種々のHis-tag融合リコンビナントタンパクの作製を行った。すなわち、Amlのシグナルシーケンスを除いた成熟Aml、活性部位と考えられるC末端側半側、基質結合部位と考えられるN末端半側のリコンビナントタンパクの作製を行い、それぞれについて精製を行った。S.mutansに対する溶菌酵素活性について検討した結果、成熟型のAmlのみ酵素活性を認めた。活性部位のみでは溶菌活性が認められなかった事から、基質結合部位が酵素活性を発揮するのに必須である事が示された。AmlタンパクはEDTA,Niイオン、銅イオン、亜鉛イオンにより活性の抑制が認められ、また逆にカルシウムイオンにより活性の増大が認められた。また、作製した成熟型AmlタンパクはS.mutans,S.sobrinus,S.gordoniiに対して溶菌活性を有したが、S.sanguinis,S.salivarius,S.mitis等には活性を示さなかった。 2)Amlの基質結合特異性の解析:基質結合部位の結晶構造解析を行う前に、基質結合部位の種々の基質への結合性について定量的に解析を行うため、解析を簡便に行うためGFP融合Amlタンパクの作製を試みた。リコンビナントタンパクは作製できたが、蛍光性が著しく弱かったため定量解析が困難であった。そこで現在至適励起の異なる他のGFPタンパク融合Amlを作製中である。 このような結果を踏まえ、次年度はAmlの基質結合部位のさらなる解析を行っていきたい。
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