本研究では、ATP受容体のP2XおよびP2Y受容体のラット味蕾における発現について調べた。 RT-PCRでP2X受容体については、味蕾を含む舌上皮にP2X4受容体およびP2X7受容体が発現していた。また同様にP2Y受容体について調べた結果、P2Y1受容体、P2Y2受容体、P2Y4受容体、P2Y6受容体およびP2Y12受容体の発現がみられた。またこれらの受容体のうち一部について免疫組織化学をおこなった。P2X4受容体、P2Y1受容体およびP2Y4受容体は、味蕾細胞の一部に発現がみられた。P2X7受容体は、味蕾内の神経線維に発現がみられた。以上の結果から味蕾内で複数のATP受容体が発現しておりATPが情報伝達物質として重要な役割を担っていることが示唆された。 さらにP2Y受容体について、他の味蕾マーカーとの二重免疫組織化学をおこなった。P2Y4受容体を発現する細胞は、味蕾の細胞型のII型細胞のマーカーであるgustducinとは一致がみられなかった。P2Y1受容体を発現する細胞は、gustducinを発現している細胞、していない細胞の両方にみられた。一方、P2Y4受容体を発現する細胞は、味蕾のシナプスを持つ細胞型であるIII型のマーカーであるNCAMとよく一致していた。また味蕾内で発現している細胞数についてP2Y1受容体よりもP2Y4受容体のほうが少なかった。これらの結果からP2Y4受容体を発現する味蕾細胞は、特にシナプス伝達制御に何らかの機能をもつことが示唆された。
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