研究概要 |
ウシ有郭乳頭の味蕾においてG蛋白質αサブユニットの一種であるガストデューシンの発現および苦味物質に対する応答への関与が認められている。さらにウシ有郭乳頭の膜蛋白質においてうま味(グルタミン酸)の相乗効果の存在が示唆されている。このようにウシ味蕾においてもラットおよびマウスと同様な味覚受容体および味覚情報伝達系が存在することが推察される。そこでウシ有郭乳頭プロテオーム、特に膜蛋白質の解析を行えば、各種の味覚受容体などの蛋白質発現プロファイルの解明および新規受容体の同定が期待できる。本研究ではウシ有郭乳頭の膜蛋白質プロテオーム解析および新規受容体の同定を目的として、味蕾を含まない舌上皮および有郭乳頭間の膜蛋白質プロテオームの発現プロファイルの比較を行った。 ウシ有郭乳頭および味蕾を含まない舌上皮より膜蛋白質を含むミクロゾーム画分をショ糖密度遠心法により調製し、2次元電気泳動に供した。1次元目にはpH3-10の範囲で等電点電気泳動を用いて行い、二次元目に7.5%ゲルによるSDS-PAGEを行った。SYPRO Rubyにて染色後、両者のスポットを比較した。これまでに味蕾での発現が明らかになっている各種の味覚受容体の遺伝子配列を基にして等電点、分子量の解析を行ったところ、これらの蛋白質は(pH6-9,約100kDa)および(pH9-10,約40kDa)の近辺に分布していると推測された。そこでこれらの領域でのウシ有郭乳頭および味蕾を含まない舌上皮の膜蛋白質のスポットの比較、検索を行ったところ、ウシ有郭乳頭に特異的なスポットが検出された。今後はこれらの特異的なスポットに関して解析を進めていく予定である。
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