本研究の目的は、免疫細胞における酪酸の病原性を明らかにすることである。申請者は歯周病の慢性疾患化の一因は、歯周病原菌が産生する酪酸が歯肉溝や歯肉組織内の免疫細胞にアポトーシスを引き起こすことであると考えている。申請者は本研究においてJurkat T細胞を用いて以下のことを明らかにした。 (1)酪酸誘導アポトーシス時におけるカスパーゼの活性化 酪酸誘導アポトーシス時におけるカスパーゼの活性化を、カスパーゼのプロセッシングを調べることによって明らかにした。酪酸濃度依存的にカスパーゼ3、カスパーゼ8、カスパーゼ9のプロセッシングがおこり、同様に実行カスパーゼの基質であるPARPのプロセッシングも起きた。また、カスパーゼ10もプロセッシングされた。このことは酪酸誘導アポトーシスにおいてカスパーゼ10の活性化が起こることを示す。 (2)アポトーシス誘導シグナル経路のドミナントネガティブ株における酪酸誘導アポトーシス 本研究においてデスレセプターと会合してシグナルをカスパーゼに伝達するFADDのドミナントネガティブ株や、会合を阻害するcFLIPタンパク質の過剰発現株を作成して酪酸のアポトーシス誘導能をしらべた。その結果、これらの株においてもアポトーシスは誘導されており、カスパーゼやPARPのプロセッシングも同様に起こっていることがわかった。このことは酪酸誘導アポトーシスにおいて、デスシグナル経路は関与していないことを示唆する。
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