本年度は、ラットを用いたパーキンソンモデル動物の作成および、これらモデル動物における摂食障害の評価法確立を目的に以下の実験をおこなった。さらに、これらモデル動物に対する神経前駆細胞の移植の効果について検討をおこなった。 1)ラットに対して、6-hydroxy dopamineの脳内投与をおこなった。これらの動物について全身性運動障害を検討したところ、明らかな障害が認められた。 2)これら動物について、薬物投与後4週間後に灌流固定をおこない、脳内のtyrosine hydroxylase陽性細胞数を検討したところ、黒質において対照群と比べ明らかな減少が認められた。 3)運動障害の発生したラットについて、1週間の食事制限をおこない空腹状態にした。これら動物に一定量の餌を与え観察した。対照群に比べて、パーキンソンモデル動物では、摂食時間の延長および"食べこぼし"の量が対照群に比べ増加した。 4)これらモデル動物に対して、同系統の新生児から調製した神経前駆細胞を移植したところ、移植2週間目には、摂食時間の延長および"食べこぼし"の増加が改善された。 5)移植動物の脳内におけるtyrosine hydroxylase陽性細胞数を検討したところ、モデル動物で認められた黒質の陽性細胞数の減少が改善された。 これらの結果を踏まえ来年度は、嚥下中枢の存在する孤束核に対する影響および、神経前駆細胞の移植より効果的な分化状態での細胞移植法の確立へと研究を進めたい。
|