初年度は、PRIP-1の遺伝子構造の解析と発現調節に関わる領域の検討を行った。 まず、PRIP-1遺伝子の5'末端を確認するために、既知のエクソンの5'側最上流領域にprimerを設計し5'RACE法を行ったところ、新たに3つのエクソンの存在を見いだし、PRIP-1遺伝子が8つのエクソンから成ることを解明した。また、3つのスプライシングバリアントを見いだし、RT-PCRや塩基配列決定による解析から、これらのうち、エクソン2・3を欠いた転写産物が主に発現していることを明らかにした。この翻訳産物は、マウス・ラットのPRIP-1とほぼ同分子量であり、これまで予想されていた翻訳開始点は正しくないことが分かり、新たな翻訳開始点を確認した。さらにprimer extension法により、この翻訳開始点から約430塩基対上流に転写開始点があることを見いだした。 この転写開始点をもとに、遺伝子上流領域の転写活性を検討した。上流約5k塩基対までの様々な長さの遺伝子上流領域を、レポーター(ルシフェラーゼ)遺伝子上流に組み込んだコンストラクトを作製し、PRIP-1を発現している神経系の培養細胞(NB69やPC12など)及び発現が見られない培養細胞(HeLaやCOSなど)に形質導入してルシフェラーゼアッセイを行った。その結果、PRIP-1を発現している培養細胞では、発現していない細胞に比べて極めて活性が高く、特に上流-240〜-110塩基対に高い転写活性能を有する領域があることが示唆された。
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