研究概要 |
【目的】 摂食行動は視床下部にある摂食調節中枢によって制御されており、近年視床下部内にある摂食調節因子を発現するニューロン群が摂食調節に深く関与していることが報告されてきた。しかし咀嚼運動に及ぼす摂食調節因子の影響についてはほとんど検索されておらず、その詳細は未だ解明されていない。口腔内固有感覚が入力する一次求心路の中継核で、咀嚼運動の調節に役立つとされている三叉神経中脳路核が摂食調節因子であるオレキシンによってどのようにコントロールされ咀嚼運動に影響を与えるのかを明らかにするため、オレキシン投与による三叉神経中脳路核ニューロンの膜特性の変化についてパッチクランプ法を用いて解析することを本研究の目的とした。 【結果】 生後0〜17日齢のラットでは、潅流液中にオレキシンA 500mMを投与することにより、三叉神経中脳路ニューロンの脱分極と入力抵抗の減少が認められた。オレキシンA投与による脱分極は日齢が進むにつれて有意に大きくなった(One-way ANOVA, Scheffe test)。入力抵抗はオレキシンA投与により有意に減少したが(t-test,P<0.01)、発育による有意な変化は認められなかった。また、オレキシンA投与により三叉神経中脳路ニューロンのバースト発火のスパイク数が抑制された。以上の結果から、オレキシンの三叉神経中脳路ニューロンへの入力は、中脳路核ニューロンのバースト発火を抑制して、末梢からの口腔感覚入力を制限している可能性があると考えられる。しかし、オレキシンの脳室内投与により摂食行動が誘発されるという報告があり、それとどう結びつくのか今後検討していく必要があると考える。
|