本研究の目的は、外分泌腺の一つ唾液腺の開口分泌の調節機構をRhoを中心に明らかにすることであった。そのために、1)Rhoが開口分泌に関与するか、2)RhoAの標的タンパク質のROCKは開口分泌に関与しているか、3)未知のRhoAの標的タンパク質はないか、を検討した。 1、Rhoが開口分泌に関与しているかどうかを検討するため、Rhoの特異的阻害剤である、ボツリヌスC3外毒素のcAMP依存性のアミラーゼの分泌に対する影響を調査した。その結果ボツリヌスC3はcAMP依存性のアミラーゼの分泌を明らかに抑制した。この結果より、Rhoがラット耳下腺腺房細胞において、アミラーゼの開口分泌に関与していることが示唆された。 2、RhoAの標的タンパク質であるROCKが開口分泌に関与しているか検討するためROCKの特異的阻害剤であるY-27632によるアミラーゼの影響を検討した。その結果、Y-27632がβアドレナリン受容体刺激依存性のアミラーゼの分泌を一部阻害すること確認した。このことよりROCKがアミラーゼの開口分泌に関与していることが示唆された。また、イムノブロットにより、ROCKの存在を確認している。 3、またROCK以外にRhoの標的タンパク質を検索する目的で酵母two hybrid systemを用い、活性型RhoAに結合するものを検索した。その結果、プロテインキナーゼNが結合する可能性が示唆された。 以上の結果より、ラット耳下腺腺房細胞において、Rhoがβアドレナリン受容体刺激によるアミラーゼの開口分泌に関与し、その下流には少なくともROCKが一部関与していることが示唆された。
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