目的 培養細胞に改変型自殺遺伝子Bax(YFP-GyrB-Bax)を遺伝子導入することにより、抗生物質クママイシン添加時のみにおいて、抗癌剤によるアポトーシス感受性を飛躍的に高めるシステムを開発した。本システムではクママイシン添加によりYFP-GyrB-Baxが細胞に傷害を与えずにミトコンドリアに移行する。このため、低濃度の抗癌剤(内在性BaxおよびYFP-GyrB-Baxがミトコンドリア移行せずアポトーシスを誘導できない濃度)でも、クママイシン添加によりYFP-GyrB-Baxが導入された細胞に選択的なアポトーシスを誘導できる。 本計画ではこのYFP-GyrB-Baxシステムを用いてBaxのミトコンドリア移行の分子機構の解明を目指した。 成果 ・クママイシン-GyrB相互作用によりYFP-GyrB-Baxの単量体-2量体を可逆的に制御可能であった ・単量体-2量体の可逆的変化がYFP-GyrB-Baxの細胞質-ミトコンドリアのシャトリングを規定した。 ・単量体-2量体の可逆的変化がYFP-GyrB-Baxのコンフォメーション変化(mAb 6A7反応性)を規定した。 ・単量体かつ細胞質に局在し6A7未反応性のYFP-GyrB-Baxにのみ結合する分子を単離した。 ・従来ミトコンドリア局在を規定すると考えられていたBaxの疎水領域はYFP-GyrB-Baxの可逆的なコンフォメーション変化による細胞質-ミトコンドリアのシャトリングには関与しなかった。 以上より改変型自殺遺伝子Bax(YFP-GyrB-Bax)は細胞質中で特異的に会合する分子により細胞質への局在が規定されていることが示唆され、この分子が内在性Baxの細胞内局在をも規定しうることが強く示唆された。
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