研究概要 |
RANKLは骨芽細胞膜上で発現するTNFファミリーのサイトカインであり、破骨細胞の分化と機能の活性化を促進する作用を有する。OPG欠損マウスとヒトOPG欠損である若年性骨バジェット病では血中RANKL値が高い。これは、OPGが直接膜型RANKLの切断を調節する可能性を示す。また、活性化T細胞等が産生する可溶型RANKLが自己免疫疾患、癌、歯周病などの全身性および局所性の骨吸収に関与すると示唆される。そこで、平成18年度の科学研究補助金により、(1)可溶型RANKLの組織由来、(2)活性型ビタミンD_3投与による可溶型RANKL産生の調節、(3)OPG、可溶型RANKおよび近縁のTNF受容体ファミリーメンバーの可溶型RANKL産生に対する抑制作用、を解析した。そして以下の研究成果を得た。 (1)OPG欠損マウスに活性型ビタミンD_3を投与すると血中RANKL値は著しく上昇した。活性型ビタミンD_3は骨芽細胞のRANKL発現を誘導したが、T細胞のそれを誘導しなかった。さらに、OPGとT細胞の二重欠損マウスを作製し解析したところ、OPG欠損マウスの血中RANKL値の亢進にT細胞が関与していないことが示された。これらの結果より可溶型RANKLはおもに骨芽細胞由来であることがわかった。(2)OPGおよび可溶型RANKは骨芽細胞および活性化T細胞の可溶型RANKL産生を抑制した。一方、OPG近縁のTNF受容体ファミリーメンバー(DR6,DcR3)は、可溶型RANKL産生を抑制しなかった。(3)活性化T細胞はOPG産生がないために可溶型RANKLを過剰に産生できると示唆された。本研究でOPGに、膜型RANKL切断の強力な抑制作用という新たな生理活性を見出した(Nakamichi Y et al.:J Immunol 178:192,2007)。
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