今年度の研究により、これまで静的な状態でしか撮像・診断ができなかった唾液腺のMRI検査を動的な状態での検出を可能とするようなMR sialographyの開発に成功した。これは従来のMR sialographyでは1〜3分程度かけ撮像されていたものを、10秒程度の撮像時間で従来と変わらないような解像度の画像を連続的に得られるようにしたものである。この撮像法の有用性は、実験ボランティアで、クエン酸による味覚刺激を行いその唾液の流出状態を30秒ごとにMR信号として検出したものと、実際のヒトからの唾液の流出状態を測定したものと相関していることを示すことで証明した。また、味覚刺激を行ってからの時間と撮像したMR画像の信号からグラフを描くことにより、様々な唾液の流出パターンがあることもこの検査法で判明した。さらに、シェーグレン症候群と診断された患者や口腔の乾燥感を訴える患者に対しても応用することで、味覚刺激後の唾液の流量、反応時間、流出パターンなどが健常者とは異なる様相を呈することが判明した。これは核医学検査を行わなければ検出出来なかった唾液腺の機能状態をMRIにより検出し、診断を行うことを可能にするもので、口腔乾燥症、シェーグレン症候群などの疾患の診断に際しての新たな指標となり得るものと考える。さらに、得られたMR画像から計測した唾液腺の体積と唾液量とも関連性があることも判明した。現在は健常者及び患者から採取された唾液の成分の違いによるMRIでの特異的な信号の有無について検討している。今後は患者の画像所見や唾液の流出パターンの違いによる治療効果の違いについても詳細に検討を行うことで、口腔乾燥症の病態解明、治療法の確立を行っていく予定である。
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