【培養ラット歯髄細胞におけるbFGFの石灰化誘導能についての解析】 8週齢ウィスター系ラット上顎切歯の歯髄を採取し、トリプシン処理後、コラーゲンコートディッシュに播種し、(0.1-10ng/ml)濃度の塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を含んだEagle's MEM培地にて培養を行った。石灰化について以下の解析を行った。 ・実験開始5日目の培地中のアルカリフォスファターゼ(ALP)活性を測定したところ、0.5及び5.0ng/ml濃度のbFGF添加群で対照群と比較して有意なALP活性の上昇を示した。 ・実験開始14日目にVon Kossa染色を行い、石灰化結節の面積を測定した。0.5及び5.0ng/ml濃度のbFGF添加群で対照群と比較して石灰化結節の面積は有意に濃度依存性に増加していた。 ・bFGFによる歯髄細胞の分化や機能の解析のため、培養14日目の歯髄細胞よりmRNAを分離し、骨基質蛋白の一つであるオステオカルシンと象牙質基質蛋白の一つであるdentin matrix protein-1(DMP-1)のmRNA量をPCR法にて計測を行った。その結果、オステオカルシン及びDMP-1の遺伝子発現は10ng/ml bFGF添加により増加していた。 これらの結果は、bFGFはラット歯髄細胞に対して、分化や石灰化に対する機能を亢進することを示すものであった。特にオステオカルシンやDMP-1といった骨基質蛋白や象牙質蛋白の産生能が増加した結果、石灰化結節の面積が増加したことが推測される。したがって、bFGFによる覆髄剤の可能性を裏付ける解析結果を示したと考えられた。
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