1.マラッセの上皮遺残細胞株の作製 矯正治療の目的で九州大学病院を受診した患者様に、今回の研究内容について十分に説明を行い、抜歯後の歯牙の利用に同意が得られたボランティアから得た歯根膜線維芽細胞(九州大学歯学研究院の生命倫理委員会にて認可されている)に対してSimian virus(SV40)T-antigenおよびhuman telomerase reverse transcriptase(hTERT)を遺伝子導入して不死化歯根膜細胞を作製した。さらに限外希釈法にてクローニングを行って得た数種のクローンのうち、上皮様の形態を呈するクローンについてキャラクタリゼーションを行った。 2.マラッセの上皮遺残細胞株のキャラクタリゼーション 同時に作製した歯肉上皮細胞株と比較したところ、ほぼ同様の敷石状の形態を呈していた。さらに、マラッセの上皮遺残や歯肉上皮が発現することが報告されているkeratin-5、19、E-cadherinの発現をRT-PCRにて解析したところ、マラッセの上皮遺残細胞株に発現が認められたことからマラッセの上皮遺残細胞株は上皮様の特徴を有していることが示唆された。また、マラッセの上皮遺残に強く発現することが報告されているエナメル基質タンパク(enamelin、ameloblastin、amelogenin)やβ3 integrinの発現をRT-PCRにて解析したところ、歯肉上皮細胞株と比較してマラッセの上皮遺残細胞株に強く発現が認められた。以上より今回作製したマラッセの上皮遺残細胞株はマラッセの上皮遺残の特徴を有していること、またエナメル基質タンパクの発現が強いことからマラッセの上皮遺残がセメント質の修復に重要な役割を果たしていることが考えられた。
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