1.マラッセの上皮遺残細胞株の作製 SV40 T-antigenおよびhTERTを遺伝子導入して作製したヒト不死化歯根膜細胞を限外希釈法にてクローニングを行うことにより上皮様の形態を呈する細胞株を得た。 2.マラッセの上皮遺残細胞株のキャラクタリゼーション この細胞株は敷石状の形態を呈しており、RT-PCR解析にてkeratin-5、19、E-cadherinの発現を認めたことから上皮様の特徴を有していることが示唆された。また、マラッセの上皮遺残に強く発現することが報告されているエナメル基質タンパク(enamelin、ameloblastin、amelogenin)、β3 integrinやTrk Aの発現をRT-PCRおよび酵素抗体法にて解析したところ、歯肉上皮細胞株と比較してマラッセの上皮遺残細胞株に強く発現が認められた。以上より今回作製したマラッセの上皮遺残細胞株はマラッセの上皮遺残の特徴を有していること、またエナメル基質タンパクの発現が強いことからマラッセの上皮遺残がセメント質の修復に重要な役割を果たしていることが考えられた。 3.歯根膜細胞クローンの解析 クローニングによって得られた他のヒト不死化歯根膜細胞株のキャラクタリゼーションを行ったところ、セメント芽細胞のマーカー因子として報告のあるCP-23を発現しておりin vivoにてセメント質様組織形成能を有する細胞株やFGF-2に二相性に反応を示し多分化能を有する細胞株が得られた。 以上より、本研究によって得られたマラッセの上皮遺残細胞の特徴を有する細胞株および分化度の異なる未分化間葉系細胞株は歯根膜およびセメント質、マラッセの上皮遺残のキャラクタリゼーションを行うための重要な実験ツールとなりうることが考えられた。
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