研究概要 |
本研究の目的は、抗菌性を有する硬組織修復・再生のための、キトサン含有リン酸カルシウム系セメントを開発することである。 本年度は、まず、αTCP粉末と第一リン酸カルシウム溶液との練和で硬化し、ハイドロキシアパタイトへ相転移する、すでに市販されているリン酸カルシウム系セメントを基本セメント材とし、この基本セメントの物性(圧縮強さ,弾性係数,熱膨張係数)について調査を行った。 次に、基本セメントヘキトサンを配合することによる試作セメント硬化体の物性変化を検討するため、キトサンの添加量増加と物性3項目の変化を比較した。キトサンの添加量が3%から10%までの範囲で物性3項目を阻害しない最大添加量を検討した。その結果、キトサンの添加量が5.2%までの試作セメント硬化体が、基本セメントとほぼ同等の物性を示した。 さらに、市販のリン酸カルシウム系セメントの組成や過去の文献をもとにリン酸カルシウム系セメントの製作を試みたが、こちらは十分な物性を得ることができなかった。製作した液と市販のセメント粉末とを混ぜ合わせると物性が得られたため、製作したセメント粉末に問題があると考えられた。そこで、セメント粉末の粒径を比較したところ、製作したセメント粉末の粒径が市販のものと比較して明らかに大きく、このことがセメントの硬化に影響している可能性が高いと考えられた。 本年度の研究結果を踏まえ、次年度、セメントの製作を進めていく予定である。
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