研究概要 |
近年、レーザーは歯科領域において歯質切削、根管内の洗浄、歯石除去、軟組織の疼痛緩和など様々な方法で臨床応用されている。今回研究に用いる試作レーザー発振装置(2波長発振レーザ:モリタ製作所,京都)はNd:YAGより若干長い波長の1.4μmからEr:YAGの波長域を超える4.0μmの範囲において波長を連続的に変えて出力することができ,また異なる2つの波長域のレーザを取り出すことが可能である.この装置で発生する近赤外領域の両波長を至適条件で使用することにより,波長2.94μm付近の安全な切開能力に加え、副波長としての新機能を一度に得ることが可能である。本研究では軟組織切開後の治癒促進効果に有効な照射条件を止血効果・殺菌効果の視点から検討する。 2波長レーザーで応用可能な1.67μmと2.94μmの波長が口腔常在菌であるStreptococcus mutansに対する殺菌効果を検索する目的で、プレート上の菌液にレーザー照射し、レーザー照射中の温度測定を行った。菌液を階段希釈、MS寒天培地に塗抹後、嫌気的に72時間培養した。培養終了後、培地上のコロニー数を測定した結果、温度上昇の有無に関わらず1.67μmは2.94μmと同等にStreptococcus mutansに対する殺菌効果を有した。波長1.67μmは、2.94μmよりも組織透過性があることを考慮すると、副波長に有効であることが示唆された。
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