昨年度、Tanneralla forsythensis(T.forsythensis)のバイオフィルム形成能を調べるため、ガッタパーチャポイントを用いて、液体培地中でバイオフィルムの形成を試み、走査型電子顕微鏡で観察したが、十分なバイオフィルムを形成することはできなかった。そこで本年度は、さまざまな基質でコートされた96穴プレートを用いて、バイオフィルムの形成を試みた。実験方法としては、菌株にはT.forsythensisの標準株、230kDa蛋白質欠失変異株、270kDa蛋白質欠失変異株、230-270kDa蛋白質欠失変異株を用いた。それらを前培養後、菌数をそろえて、96穴マイクロプレートにて嫌気条件下で4日間培養した。96穴プレートは、(1)コラーゲンタイプI、(2)コラーゲンタイプIV、(3)ラミニン、(4)フィブロネクチンでコートされたもの4種類を使用した。また、1菌株につきそれぞれ3穴ずつ使用した。培養後、洗浄し、クリスタルバイオレットで染色した。染色剤を洗い流した後、乾燥させ、エタノールを添加し、染色剤を抽出した。吸光度(570nm)を測定し、バイオフィルムの量を測定した。その結果、コラーゲンタイプIV、ラミニン、フィブロネクチンにおいて、変異株にて明らかに吸光度が低下し、標準株と230kDa蛋白質欠失変異株間、標準株と270kDa蛋白質欠失変異株間で有意に差が認められ(P<0.05)、バイオフィルムの形成能が低下したと考えられた。また、フィブロネクチンでは、標準株と230〜270kDa蛋白質欠失変異株間でも同様の結果が得られた(P<0.05)。しかし、今回は試料数が少ないため、今後はさらに多くの試料を測定し、研究成果の再現性を確認していくとともに、Porphyromonas gingivalisとの凝集についても検討していく予定である。
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