研究概要 |
近年,患者の審美性に対する要求が高まり,天然歯に近い色調をもつ修復が求められている.このような要求を満たすものとして,透過性を有するセラミックスだけで製作したオールセラミッククラウンが用いられるようになった.オールセラミッククラウンは優れた審美性をもつ反面,材料のもつ透過性のために支台歯の色調に影響を受ける.これまでオールセラミッククラウンの支台築造には,セラミックスのポストコアシステムやファイバーを用いたポストコアシステムが用いられてきた.とくにファイバーを応用したシステムは,歯根破折を減少させることが報告されている. しかし,これらのシステムで使用する既製ポストは白色のものが多いだけでなく,コア部の透過性が高すぎることによりクラウンの色調が暗くなる傾向が見受けられた.さらに根管処置が必要になった場合に,ファイバーと歯質の区別がつきにくく,必ずしも撤去が容易でないことがあった. 天然歯の色調を解析し,歯髄色に近似した色調をもつグラスファイバーポストと象牙質に近似した光透過性をもつコア材料を開発することを計画した. 本年度は歯髄色を有するグラスファイバー材料(FRC)性ポストコアの試作を行った.グラスファイバー材料(FRC)は,以前にブリッジの製作に使用した試作のFRC材料に顔料を含有させ,色調の調整を行うことにより歯髄色を付与した.その結果,着色料を濃くした場合、光の透過性が悪くなるため未重合の部分が生じる可能性が示唆された.そのため,歯髄色への近似度と重合度の関連性について検討を行う必要があると考えられた.次年度は上記の点および、理工学的特性について検討を行っていく予定である.
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