本研究では、タンパク質のような生体分子でチタンやその合金の表面を修飾することにより耐食性の向上、防食が可能か否かについて検討するものである。本年度は、昨年までの結果を論文に掲載するためにデータの不足している点を補った。 一方で、昨年度新たに展開した純チタンの過酸化水素水溶液における電気化学的腐食試験および静的浸漬試験による評価を継続的に行った。アルカリ性過酸化物を含む義歯洗浄剤に浸漬した際のチタンおよびチタン合金(Ti-0.15Pd、Ti-6A1-4V、Ti-6Al-7Nb、Ti-55Ni、Ti-10Cu、Ti-20Cr)の変色を想定して、50、100、150mM過酸化水素を含む生理食塩水をアルカリ性領域(pH8、9、10)に調整し、その中での静的浸漬試験による変色、溶出試験を行った。また、pH10に調整した150mM過酸化水素を含む生理食塩水中での純チタンの電気化学的耐食性を評価した。その結果、アルカリ性過酸化水素含有溶液中において、アルカリ性の増加に伴ってTi-10Cu、Ti-20Crを除くチタン合金の変色は増加した。また、その金属元素の溶出も同時に確認できた。一方で、純チタンの電気化学的腐食試験の結果、溶液中のアルカリ性が増加するにしたがって、腐食が進行していることが明らかになった。 以上の結果から、アルカリ性で過酸化水素を含む溶液中では、腐食を伴った変色が進行することが明らかになった。
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