研究概要 |
本研究では,テープキャスティング技術により均一な厚さを有するトリリン酸カルシウム(TCP)シートを作製した.また作製したテープキャストTCPシートのキャラクタリゼーションを行い,骨補填材としての有用性を検討した. TCPシートの作製は,β-TCP粉末,バインダ,可塑剤等を遊星型ボールミルにて混合して,TCPスラリーを調製した後,ドクターブレード法によるテープキャスティング技術により行った.その後,焼成温度がTCPシートのキャラクタリゼーションに及ぼす影響について検討するため,大気中において900,1000,1100,1150,1200℃の各焼成温度でそれぞれ2時間,TCPシートの焼成を行った.作製したテープキャストTCPシートは,電界放射走査電子顕微鏡(FE-SEM)観察,X線回折(XRD),フーリエ変換赤外分光分析(FT-IR),疑似体液浸漬試験により評価した. 焼成後のテープキャストTCPシート表面をFE-SEM観察したところ,焼成温度が高くなるにつれて粒子径が大きくなる様子が確認できた.また1200℃で焼成したテープキャストTCPシートのXRDパターンおよびFT-IRスペクトルからは,β-TCPのピークに加え,α-TCPの特徴を示すピークが確認できた.さらにはテープキャストTCPシートの溶解性を調べるため,リン酸塩緩衝液(pH=7.4,37℃)に24週間浸漬した結果,1200℃で焼成したTCPシートは,その他のTCPシートに比べて,有意に低い溶解性を示した.また疑似体液中におけるアパタイトの生成状態を調べるため,作製したTCPシートをハンクス溶液(pH=7.4,37℃)に1週間浸漬した結果,焼成TCPシートの表面にアパタイトの結晶が生成していた. 以上の結果から,本研究で作製したテープキャストTCPシートは,骨補填材として有効であることが示唆された.
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