前年度は培養肥満細胞を用いて実験を行い、肥満細胞にはβ-endorphinがpre-storeされており、種々の刺激により放出、再貯蔵されることが確認できた(RT-PCR、ELISA)。 本年度はさらにこの機序の詳細とvivoにおける動態を検討した。 1.肥満細胞に発現するreceptorの確認 RT-PCRにてμopioid receptorおよびSubstance P receptorの発現を調べたところ、いずれのmRNAの存在も確認できた。タンパク発現の証明までには至らなかったが、このことは非常に重要な作用機序の一端を示していると思われる。すなわち、肥満細胞はβ-endorphinやSubstance Pを放出するだけでなく、自身にもそれらのreceptorを発現させ、何らかの細胞内伝達シグナルを形成している可能性がある。 2.マウスアナフィラキシーショックモデルにおける各臓器のβ-endorphinの発現の検討1(RT-PCR) 最も肥満細胞の関与が知られている病態であるIgEアナフィラキシーショッグモデルを作製し、各臓器(皮膚、小腸、脾臓、肺、血液、下垂体)のproopiomelanocortin (POMC)の発現動態を検討した。ほぼ全てで陽性となったが、これは肥満細胞由来のPOMCのみならず、様々な細胞からPOMCが発現することが考えられたため、細胞を特定するには至らなかった。 3.同上2(免疫組織化学染色) 各臓器のパラフィン切片を作製し、抗β-endorphin抗体にて局在を調べた。何種類かの抗体を試したが精度の良いものがなく、皮膚においてβエンドルフィン陽性細胞が散見されたが、断定するには至らなかった。 4.アナフィラキシーショックモデルの体温変動 オピオイド拮抗薬のナルトレクソンを投与したところ病態が悪化した。 以上これからも研究を続けていく所存である。
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