本研究ではラット虚血皮弁モデルに酸性ゼラチンハイドロゲルマイクロスフィアー(AGHMs)を使った新しい血管新生療法を利用し、皮弁生着向上に対する効果を検討した。 方法:オスSDラットの右側背部に、深腸骨回旋動脈を血管茎とする皮弁を挙上した後、(1)PBS(PBS群)、(2)bFGF15μg in PBS(FGF15群)、(3)bFGF50μg in PBS(FGF50群)、(4)bFGF150μg in PBS(FGF150群)、(5)PBS含有AGHMs in PBS(PBS-AGHMs群)、(6)bFGF15μg含有AGHMs in PBS(FGF15-AGHMs群)、(7)bFGF 50μg含有AGHMs in PBS(FGF50-AGHMs群)、(8)bFGF 150μg含有AGHMs in PBS(FGF150-AGHMs群)のいずれかの溶液(300μl)を皮弁頭側recipient bedに筋注し、皮弁を縫合した。皮弁作製後7日目の皮弁を採取して組織切片を作製し、組織学的に皮弁生着に関する評価を行った。 結果:FGF150-AGHMs群は、PBS-AGHMs群及びFGF15-AGHMs群に比較し有意に皮弁頭側約20mmの肉様膜内血管密度が増加していた。AGHMsを使用しなかった群では、有意に血管密度が増加した群はなかった。またFGF150-AGHMs群は、FGF150群よりも有意に血管密度が増加していた。SMA陽性血管密度に関しても、FGF150-AGHMs群は、コントロールのPBS-AGHMs群に比較し有意にSMA陽性血管密度が増加していた。AGHMsを使用しなかった群では、有意にSMA陽性血管密度が増加した群はなかった。 結論:昨年度の皮弁壊死面積と血管造影の結果、及び今年度の組織学的評価の結果から、AGHMsを利用した血管新生療法により、皮弁の生着が向上することが示唆された。
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