遺伝子治療は、欧米ではすでに脳腫瘍や卵巣腫瘍に対して臨床応用がなされており、また、口腔癌においてもその有用性が示されている。しかし、これらの研究においては、ウイルスベクターの細胞毒性や、免疫原生の問題があげられる。これらの問題を解決するためにメラノーマに対するウイルスベクター・リポソームを用いたCaveolin-1遺伝子導入による遺伝子治療の有効性と安全性の基礎実験を行った。 本年度は、in vitroにおいて培養ヒトメラノーマ(SK-MEL-28)に対するCaveolin-1遺伝子導入による(1)Caveolin-1安定発現細胞株の作成(2)Caveolin-1遺伝子導入による腫瘍増殖の抑制(3)Caveolin-1遺伝子導入による細胞運動能(4)Caveolin-1遺伝子導入による遺伝子発現の検討を行った。 (1):pEGFP-Cav-1およびpMyc-Cav-1を導入しクローンを採取。Caveolin-1安定発現細胞株を作成した。 (2):WST-8をもちいてコントロール群と比較を行った。結果Caveolin-1遺伝子導入群において優位に細胞増殖能が抑えられていた。 (3):細胞運動の試験を行った結果Caveolin-1遺伝子導入細胞では、優位に運動能が低下していた。 (4):ウエスタンブロットにてCaveolin-1遺伝子導入細胞のカベオリンの発現を検討し、導入細胞株すべてにおいてCaveolinの強発現を確認した。 以上のことよりCaveolin-1を導入することにより細胞増殖の抑制、運動能の低下が見られCaveolin-1遺伝子導入による遺伝子治療の有効性が示唆された。
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