研究概要 |
Differentiation-inducing factor(DIF)は,細胞性粘菌の柄細胞への分化を誘導する物質として単離され、粘菌細胞以外にも哺乳類細胞で分化誘導作用や増殖抑制作用を示すことが知られていたがDIFのターゲット分子は全く不明であった。最近、われわれはphosphodiesterase(PDE)1がDIFのターゲット分子であることを世界で初めて発見した。本研究では、悪性黒色腫細胞等のPDE1を解明するために、当科で樹立・継代しているヒト歯肉由来悪性黒色腫細胞株HMG、およびヒト口蓋由来悪性黒色腫細胞株PMP、その顎下リンパ節転移巣由来MMN9、腋下リンパ節転移巣由来MAAを使用し、PDE活性の測定、RT-PCR、および、細胞増殖試験を行った。 全ての細胞でPDE1活性を確認した。MMN9細胞では、PDE1A、PDE1BとPDE1CのmRNA発現を認めたが、他の細胞ではPDE1AとPDE1Cのみであった。細胞増殖試験では、どの細胞でもPDE1の特異的阻害剤であるvinpocetin 50μMで20から30%、100μMでは80%以上増殖を抑制した。PDE1Aのスプライシングバリアントのうち、PDE1A3とPDE1A5の発現について検討したところ、HMG細胞ではPDE1A5の発現を認めたが、PMP、MMN9とMAA細胞では両方とも発現を認めなかった。また、PDE1CのスプライシングバリアントであるPDE1C1とPDE1C3の発現についても調べた結果、PMP細胞ではPDE1C1とPDE1C3の発現を認めなかったが、MMN9およびMAA細胞ではPDE1C1と1C3の発現を認めた。MMN9細胞についてシークエンスを行った結果、PDE1C1にはmRNAの配列に変異は認めなかったが、PDE1C3には1塩基の変異が認められた。しかし、アミノ酸配列には影響がなかった。
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