多血小板血漿(platelet-rich plasma:以下PRP)は、濃縮された血小板を含む血漿である。骨形成を促進するさまざまな成長因子を豊富に含み、歯槽骨再生促進効果が期待されている。このPRPがヒトの脂肪由来間葉系幹細胞(Adipose-derived stem cells以下AdSCs)の増殖・骨分化に与える影響を、生体外ならびに生体内の2条件下で調べた。 1.生体外におけるPRPのはたらき (方法)凍結保存したヒトAdSCs、線維芽細胞、骨芽細胞を、PRP添加培地とウシ胎仔血清(FCS)添加培地の2条件で3日間培養し、細胞増殖能を比較した。さらにAdSCs、骨芽細胞を、PRP添加培地と骨分化促進因子添加培地の2条件で培養し、2週間後にアルカリフォスファターゼ染色(ALP染色)、4週間後にvon Kossa染色を行い、細胞の骨分化度を調べた。 (結果)PRP添加群の細胞はいずれも、FCS添加群よりも高い増殖能を示した。またAdSCsと骨芽細胞のPRP添加群は、ALP染色、von Kossa染色ともに骨分化促進因子添加培地と同レベルの陽性を示した。これによりPRPが細胞増殖能ならびに骨分化誘導を促進することが示唆された。 2.生体内におけるPRPのはたらき (方法)ヒトAdSCsをヌードマウス皮下に移植して、生体内における骨誘導能を調べた。PRPを吸収性止血剤(サージセル)に吸収させたゲルをAdSCs移植の足場として用いた。対照群は、PRPに代わりウシ血清を用いた。 (結果)4週間後、PRP群の皮内組織内に、異所性の旺盛な骨新生像を認めた。一方、対照群には、明らかな骨新生像は認められなかった。したがって、PRPゲルを併用することにより、AdSCsは生体内で骨分化が可能になることが示唆された。
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