スタチンは骨芽細胞に対して、有意な分化促進と石灰化促進作用を有する事がわかっている。また、in vitroにおいて骨芽細胞の分化促進の一つには、VEGF遺伝子発現促進が関係していることが示唆される。一方、スタチンを単独で、ラットの腹腔内に投与しても、骨密度には変化のないことがわかった。これらの事から、スタチンの骨形成作用をin vivoで十分に発揮させるためには、(1)何らかの骨形成(骨吸収抑制)作用を持つ薬剤との併用、あるいは、(2)局所への直接投与のいずれかが必要であると考えられる。 (1)の検索を行うために、エストロゲンとSERMの一つであるラロキシフェンが骨やその他の臓器に対して起こす、VEGF遺伝子発現と蛋白質の発現の変化について詳しく解析を行った。その結果ラロキシフェンは血中のVEGF濃度を上昇させることは無かったが、骨に対しては、エストロゲンと同様に、有意なVEGF遺伝子発現効果を示した。よって、ラロキシフェンとの併用で、全身応用でも、スタチンが骨形成作用を表す可能性があることがわかった。 (2)スタチンの局所応用を行うために、in vitroで骨芽細胞以外の細胞に対するスタチンの作用について検索を行った。ST2細胞は脂肪細胞や骨などに分化するが、スタチンは、脂肪細胞への分化を抑制し、骨芽細胞への分化を促進した。同様に脂肪に分化する3T3-L1細胞でも、スタチンは分化の抑制を行う事がわかった。また、軟骨に分化するATDC5細胞においては、スタチンは分化の抑制をする一方で、石灰化の促進作用(分化促進)がある可能性が判明した。 上記の事象について、現在、学術論文等への報告準備を行っている。
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