研究課題
口腔扁平上皮癌は強い局所浸潤能を有し、顎骨への浸潤は臨床上大きな問題となっている。そこでヒト口腔癌における顎骨浸潤に関わるサイトカインの発現を分子病理学的に解析し、新たなマーカーとして臨床上有用であるか検討した。方法は当大学倫理規定にもとづき、同意の得られた手術標本の腫瘍細胞から、顎骨浸潤癌と非浸潤癌の間で骨吸収関連サイトカインの発現を免疫組織化学的に解析した。また同様の骨吸収関連サイトカインについてmRNAが発現しているか併せて検討をおこなった。結果として、今回検索したサイトカインはインターロイキン(IL)-1α、IL-1β、IL-6、IL-11、IL-18、副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)、腫瘍壊死因子(TNF)-α、Transforming Growth Factor (TGF)-βの8種類であり、15症例についてプロスペクティブに解析した結果、顎骨浸潤癌で強い染色性を示したのはIL-6、PTHrPおよびTNF-αであり、歯肉癌の顎骨浸潤にこれらサイトカインの発現が関与している可能性が強く示唆された。そして本試料から採取したcDNAよりこれらのmRNAの発現を高頻度に確認した。さらに当教室で確立したマウス顎骨浸潤モデルで同様の結果を得ることが判明し、学会誌に投稿、掲載された。今後は上記サイトカインに加え、近年破骨細胞分化因子として、その動態が注目されているreceptor activator of nuclear factor-κβ ligand (RANKL)およびRANKLの受容体であるreceptor activator of nuclear factor-κβ (RANK)、そしてRANKのおとり受容体(decoy receptor)であるOsteoprotegerin (OPG)について発現解析をおこない、顎骨浸潤の予測因子の有用性について検討する。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (3件)
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