本年度は、仮骨延長法を用いたインプラント応用研究の現状把握、情報交換のため国内学会(日本口腔インプラント学会)へ参加したが、実験的研究および臨床研究でも従来の仮骨延長法は技術的に難しく、臨床で求められる低侵襲、低リスクの方向とはかけ離れているとの報告も見られた。本研究の方法は骨を分割してその間にできる仮骨を延長させる従来の仮骨延長法と異なり、分割する骨の代わりに薄い吸収性プレートを骨膜下に挿入してこれを徐々に挙上して仮骨を形成させる方法で、技術的には容易である。本年度は、上記の概念の検討のために従来の歯槽部仮骨延長装置を使って骨の増量の可能性について観察を行った。具体的には骨代謝の活発な家兎を用いて、チタン製の仮骨延長装置を下顎骨骨膜下に埋入し、プレートがずれないように骨膜へ縫合固定した。皮質骨は血流が少なく活発な骨形成が期待できないので、皮質骨に骨髄までのアクセス孔をあけてプレート下の骨形成を促し、10日間の治癒期間の後、1日に1mmずつ5mmまで拡大させ、2週後、4週後、12週後に屠殺し、標本を採取した。しかし、創の細菌感染等が認められる個体もあったため、今後吸収性プレートでの本法の応用にあたっては切開法、仮骨延長器の固定法、および抗生剤の投与等の術式の変更が必要と思われた。来年度前半には本年度で採取した標本から脱灰薄切切片を作製し、オステオポンチン、オステオカルシン、I型コラーゲンのmRNAを検出して骨形成にかかわる遺伝子の発現と局在の同定を完了する予定である。さらに本年度の実験結果をふまえ、仮骨延長装置を吸収性プレートに置き換えて検証する。
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