仮骨延長法を用いたインプラント応用研究の現状把握、情報交換のため国際学会(American Academy of Implant Dentistry)へ参加した。仮骨延長に関するデバイスや術式に関する報告は従来ものの応用に限られていた。これは仮骨延長法自体が技術的に難しく臨床で求められる低侵襲・低リスクの方向性とはかけ離れているためとも考えられた。本研究の方法は従来の仮骨延長法と異なり骨膜を挙上する方法で骨を分割する必要が無く、吸収性プレートを使用するために仮骨延長装置の除去も必要が無いので、技術的に容易で低侵襲な方法である。 上記の概念の検討のために従来のチタン製歯槽部仮骨延長装置を使って骨形成の可能性について検討を行い、さらに吸収性プレートを応用した仮骨延長装置を用いて骨形成の比較検討を行った。実験には骨代謝の活発な日本白色家兎を用いて、チタン製およびポリ-L-乳酸(PLLA)製の仮骨延長装置を下顎骨骨膜下に埋入した。7日間の治癒期間の後、1日に0.8mmずつ4mmまで拡大させ、仮骨延長装置拡大終了2週後、4週後に屠殺し、標本を採取した。2週後例ですでにチタン製およびPLLA製の仮骨延長装置と母床骨の間に新生骨様の組織が形成されていた。4週後例ではチタン製およびPLLA製の仮骨延長装置と母床骨の間に形成された新生骨様の組織は成熟し、特にPLLA製の仮骨延長装置を用いたものでは新生骨様組織がより成熟していた。 従来の仮骨延長法では骨と骨との間に仮骨を形成させていたが、本研究によって骨と骨膜との間でも仮骨延長が可能であり、さらに仮骨延長装置はチタンおよびPLLAのような吸収性プレートでも仮骨形成が可能であることが示唆された。
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