研究概要 |
本研究の目的は顎関節症治療の一環として行われる関節腔洗浄療法の治療の際に採取される滑液を生化学的に解析するとともに、解剖学的所見と臨床症状を調査しその関連を追及することである。 本年度に行なった内容は以下の3点である。 1.北海道大学病院歯科診療センターを受診しclosed lockを伴う顎関節症患者の上関節腔内滑液を採取した。その後サンプルを3000×gで10分間遠心分離し、上清のみを生化学的分析に用いた。生化学的分析としてはenzyme immunoassay kitにてプロスタグランジン濃度を測定した。またその測定したプロスタグランジン濃度と顎関節の臨床症状および検査結果の関連性を調査した。 臨床症状は、開口時摂食時の疼痛度をVASにて評価するとともに開口度を測定した。解剖学的所見はMRIにて骨変化を評価し、関節炎・軟骨変化・癒着に関しては関節穿刺術時に同時に行なわれる関節鏡所見にて評価した。 その結果、プロスタグランジン量と骨変化の重症度に有意な相関が認められた。しかし関節炎、軟骨変化、癒着の重症度とプロスタグランジン量に相関は認められなかった。 2.上記患者の滑液サンプルを用いてサイトカイン(IL-1β,-6,TNF-α)に関してenzyme immunoassay kitを用いてサイトカイン濃度を測定を行なった。 3.上記患者の滑液サンプル中の滑膜細胞の単離を行ない、10%FCS含有α-MEMにて培養を試みている。その細胞の性質を分析するとともに同細胞に対する骨吸収抑制剤の効果について検討を行なう予定である。
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