研究概要 |
OPG遺伝子が欠損した状態での再植歯の歯髄・歯周組織の治癒過程を経時的に評価するために以下の実験を行なった。 OPG遺伝子欠損マウスの上顎第一臼歯を用いた歯牙再植実 実験動物には5週齢の雄性OPG遺伝子欠損マウス(OPG群)を用い、十分な麻酔下で実態顕微鏡のもと上顎右側第一臼歯を抜去した。抜去した歯に破折が無いこと確認した後、直ちに元の位置に再植した。歯牙の抜去および再植時の歯冠部の保持には、先端部分を独自に加工した専用のピンセットを用いた。対照実験として、5週齢の雄性野生型マウスを用いた歯牙再植処置を同様に行いコントロール群とした。 再植後1,3,7,14,28,72日後にアルデヒド溶液にて潅流固定を行い、上顎顎骨を摘出し、EDTA溶液にて脱灰後、パラフィン切片、凍結切片、および樹脂切片を作製し、再植した上顎右側第一臼歯の歯髄・歯周組織の組織学的観察を行った。 OPG群では、著しい歯根分の象牙質ならびセメント質の吸収が認められ、その周囲には多数のTRAPase(酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ)陽性を示す破歯細胞が観察された。再植後14日後では、歯根部がほとんど吸収され、その概形も消失しているのが観察された。一方、コントロール群でもTRAPase陽性の破歯細胞が観察され、若干の歯根吸収を認められたが、OPG群ほどの著しいものではなく、歯根概形は保たれていた。ただし、歯髄組織内部では、骨様の硬組織形成や著しい炎症性細胞の浸潤が観察された。 以上の結果より、OPG遺伝子の欠如は、OPGによる破骨細胞形成の抑制が期待できないので、直接的にRANK・RANKLの作用によって破骨細胞形成が活性化されことが推察された。また、歯牙再植処置のような局所的な組織傷害や侵襲に対しても、OPGが破歯細胞形成を抑制し再植歯の治癒に何らかの良い効果を与える可能性が示唆された。
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