研究概要 |
OPG添窩溶液が脱落歯保存液としての有効性を検討するために以下の実験を行った。 OPG添窩溶液に脱臼歯を保存した後の正常マウスならびOPG遺伝子欠損マウスの上顎第一臼歯を用いた歯牙再植実験 実験動物には5週齢の雄性OPG遺伝子欠損マウス(OPG遺伝子欠損群)を用い、十分な麻酔下で実態顕微鏡のもと上顎右側第一臼歯を抜去した。抜去した歯に破折が無いこと確認した後、生理食塩水(OPG無添加群)ならびOPG濃度が0.1,10,1000ng/ml(OPG投与群・3群)に調整された溶液の中に30分保存した後、元の位置に再植した。対照実験として、5週齢の雄性野生型マウスを用いて同様の実験を行いコントロール群とした。 再植後1,3,7,14,28,72日後にアルデヒド溶液にて潅流固定を行い、上顎顎骨を摘出し、EDTA溶液にて脱灰後、パラフィン切片、凍結切片、および樹脂切片を作製し、再植した上顎右側第一臼歯の歯髄・歯周組織の組織学的観察を行った。 OPG遺伝子欠損群では、脱臼歯の保存液濃度が10と1000ng/mlの中には、非常に良好な治癒経過を示すものも観察されたが、再植歯の歯根吸収が著しいものも中には観察され、脱臼・再植の一連の手技やその後の再植歯の環境が各固体によって異なるために、内因性のOPGタンパク欠如によって更に増幅され、再植歯の予後に影響を与えている可能性が推察された。 コントロール群では、OPG遺伝子欠損群同様に10と1000ng/mlの中に、高い確率で、非常に良好な治癒経過を示すものが観察された。治癒経過が不良なものでもOPG遺伝子欠損群に比べ、その侵襲の程度は組織化学的に非常にマイルドなものを示した。 以上の結果より、10ng/ml以上のOPG添窩溶液は脱臼歯の保存液として有効性が高いことが推察された。但し、内因性OPGタンパクの欠如は、歯牙再植においてもRANK・RANKLの作用によって破骨細胞・破歯細胞形成を活発化し、より大きな侵襲を引き起こすことが示唆された。
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