副腎皮質ホルモン(ステロイド)は身体に様々な副作用を引き起こすことが知られている。しかし、歯および刺繍組織におけるステロイド受容体の発現に関する報告は全くない、そこでわれわれはラット切歯を用いて硬組織および周囲組織形成細胞におけるステロイド受容体の発現の局在を明らかにすることにより、歯の発生過程における、エナメル芽細胞、象牙芽細胞、歯根膜細胞の分化におけるステロイドホルモンの関与を考察している。 免疫組織学的手法によるステロイドレセプターの局在について報告する。脱パラ切片を0.03%過酸化水素水による内因性ペルオキシダーゼブロック処理後、PBS洗浄、切片を1%ウシ血清アルブミン含有PBSで30分間、室温で処理し、組織中の非特異的結合を阻害した。それぞれ至適希釈倍率に希釈した、抗血清で4℃、24時間処理。切片をPBSで洗浄後、2次抗体としてビオチン化抗ウサギIgG抗体を用いABC法にて検出した。対比染色はメチルグリーンを用いた。 グルココルチコイドレセプター抗体による免疫染色では、エナメル芽細胞では分化の程度に関係なく免疫陽性反応が認められた。また、外エナメル上皮にも、エナメル芽細胞の分化に関係なく強い陽性反応示が認められた。歯根膜組織では線維芽細胞に、歯髄組織では、象牙芽細胞にも強い免疫陽性反応が見られた。ミネラルコルチコイドレセプター抗体による免疫染色では、エナメル芽細胞に免疫陽性反応はなく、成熟期後期外エナメル上皮乳頭層のみ陽性反応が認められた。歯根膜、歯髄組織には免疫陽性反応を認める細胞は存在しなかった。現在、ステロイド療法治療下のヒト乳歯を組織形態学的に検索中である。
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