本研究は歯根膜の圧感覚を支配する三叉神経中脳路核(Vmes)ニューロンを末端から逆行性に染色する方法を確立し、この逆行性の染色法とVmesニューロンに発現している神経伝達物質受容体を免疫組織化学染色により染色する方法を組み合わせることで未だ不明な部分が多いことを目的に立案された。Vmesニューロンは歯根膜の他に咀嚼筋の筋紡錘の感覚も支配しており、これらのニューロン細胞体が集合して三叉神経中脳路核(Vmes)を形成している。Vmesについて組織学的に解析を行う際には対象とするニューロンの支配部位を明確にする必要があり、特に歯根膜支配のVmesニューロンを明確に同定した報告は少ないため、この同定を第一の目的とした。従来、逆行性の染色にはデキストラン・テトラメチルローダミン(Fluoro-ruby)が使われてきたが、歯根膜からの取り込みでは逆行性に染色された細胞体はほとんど認められなかった。このためデキストラン・ローダミンBを使用したところ、少ないながらVmesニューロン細胞体を逆行性に染色することが可能となった(小児歯科学雑誌44巻4号、2006)。しかし、数個の細胞体しか染色されなかったことから、今後、より多数の細胞体を染色する方法の確立が必要と考えられた。また、粉末食を与えたラットのVmesニューロンにおけるGABA(A)受容体の局在を固形食を与えたラットのものと比較したところ、受容体の局在に差異が認められた。(未発表)今後、他の受容体についても解析を進めるとともに、上下顎咬合の早期接触などのモデル動物を作り、これらについてもデータの集積・解析を進める予定である。
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