成人被検者に対して、側面位および正面位頭部エックス線規格写真から得られた二次元画像と高解像度CT三次元画像をマッチングして、頭部エックス線規格写真解析による規格化されたデータを利用しながら、頭蓋顎顔面の三次元形態の定量解析をも行える歯科矯正治療診断システムを開発することを目的として以下の通り実験を行った。矯正歯科治療を受けた経験のない永久歯列期の被検者20名に対して、通法どおり側面位および正面位頭部エックス線規格写真の撮影をおこない二次元画像データを得た。また、姫路市の開業歯科医院の協力を得て、顎顔面コーンビームエックス線CT装置を用い、撮像領域=15cm、スライス厚さ=0.3mmの条件でCT画像を撮像し三次元画像データを得た。精度の高い解剖学的指標点3点を決定し、それを基準として側面位および正面位頭部エックス線規格写真の二次元データおよびCT画像の三次元データからその他各計測点の精度に関して検討した。検討の結果を踏まえ、側面位および正面位頭部エックス線規格写真の二次元データでは同定が困難であるがCT画像の三次元データでは同定可能で、かつ治療方針の立案に重要と考えられる計測点に関して、基準平面に対して前後的、水平的、上下的な誤差を計測することを検討している。この誤差に関して定量的な評価を行うことによって、計測点が側面位および正面位頭部エックス線規格写真の二次元データ上では読影困難であっても、その近似的な点を示唆することが可能になると予測されるため、二次元データと三次元データ間の比較検討がより容易になると考えられる。
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