研究概要 |
亜鉛フィンガー転写調節因子のうち、Sp7/Osterix転写因子に関する研究を行った。 Sp7/Osterix転写因子はC2H2型亜鉛フィンガー転写調節因子であり、ノックアウトマウスにおいて骨形成が見られず、骨形成に必須の転写因子であることが報告されている。歯周組織において、歯根膜は骨再生に必須の細胞であるが、その機能は未だ解明されていない。そこで、ヒト歯根膜でのSp7/Osterix発現及びその機能に関しての実験を行った。歯学部付属病院に来院した6名の患者さんの抜去歯牙歯根表面から歯根膜を採取し、RT-PCR法にてOsterixのmRNA発現を検討した。また、アウトグロース法にてヒト歯根膜細胞を培養し、その培養したヒト歯根膜細胞からもRT-PCR法にてOsterixのmRNA発現を検討した。その結果、臨床歯禄膜サンプルからも培養した歯根膜細胞からもOsterix/Sp7転写因子mRNA発現が観察された。次に、ヒトでの配列を元にOsterix/Sp7発現ベクターを作成した。発現ベクターを歯根膜細胞に遺伝子導入し、発現ベクター一導入6時間後にL-アスコルビン酸(50mg/mL)とβ-グリセロフォスフェート(10mM)含有α-MEM培養液に交換し培養した。培養24,48,72時間後にこれらの細胞の全RNAを抽出し、RT-PCR法にて計測した。その結果、Osterix遺伝子発現増強によって、コントロールに比べて、BoneSiaroProtein遺伝手の発現増強が認められた。以上の実験から、ヒト歯根膜にはOsterix/Sp7転写因子が恒常的に発現しており、そして、その発現が歯根膜細胞の石灰化に影響を与えている可能性が示唆された。
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