歯周炎組織中には自己成分に対しても応答するT細胞の存在が報告されており、歯周炎の病態形成には自己反応性のT細胞と免疫応答を制御する働きを持つ制御性T細胞のバランスが重要であると考えられる。そこで今回、歯周炎組織中に浸潤しているT細胞のクローン化を行い、病態形成に関与すると考えられる分子の遺伝子発現を検索した。 インフォームドコンセントの得られた慢性炎症性歯周炎に罹患している患者様より、歯周手術時に慢性炎症性歯周炎罹患組織を採取した。組織中より細胞を抽出し、比重遠心法にてリンパ球を分離した。分離したリンパ球を培養し増殖させた後、磁気細胞分離システムを用いてCD4^+T細胞を分離した。その後、限界希釈法にて細胞のクローン化をはかった。樹立されたT細胞よりmRNAを抽出し、RT-PCR法にて病態形成に関与すると考えられる分子の遺伝子発現を検索した。 遺伝子発現検索の結果、慢性炎症性歯周組織より樹立したT細胞クローンの全てにおいてCD25、CTLA-4、TGF-βのmRNAの発現が認められた。また、CD25やCTLA-4に加えてCD4^+CD25^+制御性T細胞の機能発現に重要かつ特異的な遺伝子と考えられているFOXP3遺伝子についても高頻度に検出された。 今回得られた歯周炎組織サンプルやクローンのほとんどでFOXP3 mRNAの発現が認められた。それに加えてIL-4やTGF-βといった制御性サイトカインの発現がCTLA-4 mRNAの発現と共に認められた。歯周炎組織中には数多くの成熟した樹上細胞が存在し、大量のTGF-β mRNAも発現していることから歯周炎局所において制御性T細胞もしくはその前駆細胞が存在しているだろうことが明らかとなった。
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