歯周組織破壊は歯周病原細菌自体の病原性というよりは、病原因子に対する免疫応答の結果生じたメディエーターによって引き起こされるということが明らかになってきている。我々はこれまでの研究から、歯周炎組織中には自己hsp60反応性のT細胞が存在し、また、自己hsp60で活性化されたT細胞はIFN-γを産生して単球・マクロファージ系の細胞による炎症性サイトカイン産生を上昇させることを明らかにしてきた。このような自己反応性のT細胞を抑制する細胞として近年、抑制性T細胞(Regulatory T cell ; Tr)が注目されている。そこで我々は歯周組織破壊におけるTrの関与について検索を行った。 結果、免疫組織学的検索から歯周炎組織中においてTrのマーカーといわれているFOXP3を発現している細胞の存在が認められた。さらに歯周炎組織破壊におけるTr細胞の関与を検索すべく歯周炎組織よりT細胞クローンを樹立した。樹立されたクローンの中からFOXP3発現の認められなかったものと認められたもののうちいつくかのクローンを選出し、同患者の末梢血から分離したCD4^+CD25^+T細胞集団との間でその性状について比較検討を行った。CD4^+CD25^-T細胞に対する増殖抑制能について検索を行ったところ、末梢血から分離したCD4^+CD25^+T細胞集団はCD4^+CD25^-T細胞の増殖を抑制した。しかしながら歯肉から樹立したクローンではFOXP3遺伝子の発現の有無に関らずCD4^+CD25^-T細胞の増殖を亢進した。 以上の結果から、歯周炎組織中においてCD4^+FOXP3^+T細胞が存在することが明らかとなった。しかしながら、そこに存在するCD4^+FOXP3^+T細胞のすべてが必ずしもTrとしての機能を果たすわけではいことが示された。
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