研究概要 |
歯周炎はプラーク中に含まれる歯周病原性細菌により惹起される慢性炎症性疾患でT細胞などの免疫担当細胞と線維芽細胞との複雑な相互作用によって病変が形成されているが報告されている。ケモカインはサイトカインの一種であり、炎症性細胞などの遊走、浸潤に関与していることが報告されている。その中の一つCXCL12はT細胞の遊走だけでなく血管新生などにも関与していることが報告されているが、歯周炎での発現ならびにその役割については明らかとなっていない。本研究ではCXCL12ならびにそのレセプターであるCXCR4に着目し、歯周炎病変局所でのCXCL12およびCXCR4発現の解析、ならびに歯周組織の主な構成細胞の一つであるヒト歯肉線維芽細胞(HGF)のCXCL12産生の解析を行った。 免疫組織化学的解析により歯周炎病変局所においてHGFはCXCL12を発現しており、同一部位にCXCR4陽性炎症性細胞が浸潤していることが明らかとなった。また、正常歯肉中のHGFもCXCL12を発現していた。さらに、in vitroにてHGFを培養しCXCL12発現の解析を行った。ELISA法によりHGFは恒常的にCXCL12を産生しており、そのCXCL12産生はRANTES、CCL20、Fractalkineなどのケモカイン、TNF-α,IL-1βなどの炎症性サイトカイン、ならびにE.coli LPS, S.aureus LTAならびにCpG DNAなどの細菌由来物質によってもCXCL12産生は増加することが明らかとなった。一方、歯周病原性細菌の一つであるP.gingivalisの菌体ならびにLPSによりCXCL12産生は抑制された。 これらのことより、HGFのCXCL12産生はサイトカイン、ケモカインならびに細菌由来物質により複雑にコントロールされていることが明らかとなった。
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